●共同研究は互いを知る良い機会
共同研究とは、立場の異なる複数の人たちで協力して行う研究・開発のことです。知識や知恵、技術や資金を互いに出し合うことで、単独では達成することが困難な研究課題に取り組みます。 特に、大学と企業の共同研究は「産学連携」と呼ばれることもあります。
教員が企業や研究所と共同研究を行っている理工学系の研究室に所属すると、学生や大学院生がその共同研究の一部を担うことがあります。企業の人と一緒に仕事をすることで相手の企業のことを深く知れますし、自分のことも相手に知ってもらうことができる良い機会です。
●周囲の人は「社会人」、従うべき「契約」
共に共同研究をする企業の人は、学生ではなく「社会人」です。会社という組織に所属している人の振る舞いや、仕事として研究・開発を行う際の働き方や態度を身近に見られることは、学生にとって貴重な経験になるでしょう。
一方で、守らなければいけないルールもあります。企業と共同研究を行う場合には、役割や資金の分担、守秘義務や研究成果物の取り扱いなどを定めた共同研究契約を交わします。この契約に違反した行動を取れば信用を失いますし、特許申請ができなくなるような損害が生じることもありえます。「知らずにやっちゃった」で済まないことが多いのは、社会の厳しさとも言えるでしょう。
●どれほど好印象でも採用は確約されない
共同研究相手の企業の人との相性がよく、その企業に入社したいという気持ちを抱くこともあると思います。時には、相手先の企業の人からラブコールを受けることもあるでしょう。
しかし、確実に内定が出るのかと言われれば、そうではありません。企業の採用活動は人事部が担当しており、研究や開発に関する部署の人の担当ではありません。どれほど共同研究をした相手企業の人から好印象でも、相手企業の部署間でどれほど情報が共有されているかは分かりませんし、人事部の判断で採用されないことも当然あります。油断せず、しっかりとした準備は必要です。
また、就職すれば「外」の人間から「身内」の人間になります。企業内の規定に従わなければなりませんし、希望している部署に配属されるかが保証されない場合も多いです。共同研究で接した相手がいかに素晴らしい人であったとしても、その企業が「自分が働く環境」として適しているかどうかは別の話です。就職先を考えるときには、キャリアプランやライフプランを踏まえて考えることが大切です。
References
アカリク (2021). 企業との共同研究に参加できると就活に有利!メリット・デメリットとともに解説. https://acaric.jp/articles/2059 (Accessed: 2024/8/31)
〈この記事を書いた人〉
下平剛司
総合研究大学院大学統合進化科学コース博士後期課程1年。福岡大学シチズンサイエンス研究センター研究員。修士課程修了後から博士後期課程入学までの間、国立の研究機関で事務職として組織運営のバックオフィス業務に携わっていた。